若い婦人のための書棚

作者:宮本百合子 約14分で読めます

若い婦人のための書棚を縦書きで読む(Textfall)

私たちのまわりには何と沢山の本があることだろう。ほとんどおそろしいほどどっさり本がある。けれども、私たちがそれを読む時間も金も限られており、何かの形でまとまった系統を立てて、ごく毎日の生活の滋養になるような工合に本を選び、それをポツポツと読んでゆくことは容易でない。  ブック・レビュウをして深く感じることは、ただ月二三冊の新刊の本をとりあげていって見ても、読者の本を読んでゆく一貫した方法というものに対しては、大して貢献するところがないであろうという不安である。そこで、本月と来月とはこれまでのいわばしきたりを変えて、一つちょっとした試みをして見たいと思う。何年の間でも読者に役に立つような読書プランというようなものを、即興的にではあるが、こしらえて見たい。  従来からも、日本は家族を中心においた風習の国である。その家族を単位とした社会の生活の中で、また家族の生活そのものの中で女はどういう位置を占め、今日までの歴史を生きつづけて来ているのであろうか。昨今は、日本の女と家庭の結びつき、母としての女が女の最上の生き方であるという考えかたが強められて来ている。だけれども、一方では新聞で見てもわかるとおり、若い女が戦時の必要のために工場へ出て働いている数はおびただしいものになって来ているし、女の生理に害があるといって禁止されていた女の鉱山の地下労働へも女がまた今は入ることになって来ている。経済の事情が入りくんで来るにつれて、親子、夫婦、兄妹の家族内の関係もいろいろと複雑になって来ていて、私たちが真に人間らしい心持で、家族の生活を守り、高め、美しいものにしてゆくためには、今日ただ自分ひとりの気の持ちようだけでは屡々破綻する現実の事情におかれている。女と生れたからには、女として十分花咲き、実をも結んだ生涯をどんなに私たちは望んでいるだろう。女に生れて残念だということが、いわばしっかりした女のひとの口からもれるような世の中であってはならない。しかもそういう実際があるとすれば若い女の世代は狡くそれから自分一人だけの身をかわしてしまわず、女全体の関係していることとして、堅忍に勇ましくそれを着実な方法で、ましにしてゆくために毎日の努力がされなければならないのだと思う。 「家族制度全集」という叢書が東京河出書房から出されはじめた。法学博士穂積重遠、中川善之助両氏の責任監輯で、各巻第一部史論篇

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底本:「宮本百合子全集 第十四巻」新日本出版社
入力:柴田卓治 校正:米田進
出典:青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/cards/000311/card3098.html)