ソヴェト労働者の解放された生活

作者:宮本百合子 約6分で読めます

ソヴェト労働者の解放された生活を縦書きで読む(Textfall)

家主がいない

ソヴェト同盟には地主がない、従って家主という小面倒な奴もいない。住居は殆どみんな国家のものだ。モスクワならモスクワ市の住宅管理局というものがあってそこから組合で、または個人で家を借りるのだ。  ところが一つ大いに愉快なことがある。それはさすがはプロレタリアートと農民のソヴェト同盟だ。家賃は借りる人が一ヵ月にとる月給に応じてきめられる。日本人なんぞは、例えば家主の権田の親爺が月十八円ときめてみろ、その家賃は一文だって動かしゃしない。払えないものは借りるナ! それっきりだ。  ソヴェト同盟では、モスクワ市について云うと九尺四方で四十カペイキ(四十銭に相当する)。それが基準だ。  一つの室でも、だから住む人間によって値段がちがって来る。月給六十ルーブリ(一ルーブリは一円)とる工場労働者が十ルーブリで借りていた室を、仮りに今度は百五十ルーブリとる労働者がかりることになったとする。室代は月給が九十ルーブリ増した率で何割か増して高く払うというわけなんだ。  痛快なのは、ソヴェト同盟の生産拡張五ヵ年計画がはじまるまで、狡いことして儲けていた小成金や商人が、三十ルーブリの室なら九十ルーブリという風に、いつもキット三倍の税をかけられていたことだ。家賃が三倍になるばかりじゃない。電燈料もガス代も水道税も三倍だ。それだけでも、奴等はすっかりへたばった。  革命後、ソヴェト同盟の保健省は工場、農村の勤労者たちをいい家に住まわせようと、大努力をやっている。共同住宅建築組合に補助金を出してドシドシ労働者住宅を建てているばかりか、新しく出来る大工場には、必ず附属の新式な住宅がある。  モスクワ市の中にだって、真中に花壇や子供の砂遊び場のついた新住宅が目立って殖えて来た。五ヵ年計画は、勤労者の住居増築のために七十四億九百万ルーブリという金を支出している。住宅の差配は役人ではない。住んでる連中から選出の委員制度だ。

うまい食事を

――やすくて、美味いプロレタリアの食事を――  レーニンは、婦人を台所から解放し、勉強したり、休んだりする時間を出来るだけ沢山与え、文化の程度を高めようとして苦心した。ソヴェト同盟では、十四年来面倒な台所を、大仕掛の国営厨房工場というものに変えることをやって来た。  尤も、昔からロシア人は、日本人のように三度三度米の飯

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底本:「宮本百合子全集 第九巻」新日本出版社
入力:柴田卓治 校正:米田進
出典:青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/cards/000311/card2744.html)