こまどりと酒

作者:小川未明 約9分で読めます

こまどりと酒を縦書きで読む(Textfall)

夜おそくまで、おじいさんは仕事をしていました。寒い、冬のことで、外には、雪がちらちらと降っていました。風にあおられて、そのたびに、さらさらと音をたてて、窓の障子に当たるのがきこえました。  家の内に、ランプの火は、うす暗くともっていました。そして、おじいさんが、槌でわらを叩く音が、さびしいあたりに、おりおりひびいたのであります。  このおじいさんは、たいそう酒が好きでしたが、貧しくて、毎晩のように、それを飲むことができませんでした。それで、夜業に、こうしてわらじを造って、これを町に売りにゆき、帰りに酒を買ってくるのをたのしみにしていたのであります。  野原も、村も、山も、もう雪で真っ白でありました。おじいさんは、毎晩根気よく仕事をつづけていたのであります。  こう、雪が降っては、隣の人も話にやってくるには難儀でした。おじいさんは、しんとした外のけはいに耳を傾けながら、「また、だいぶ雪が積もったとみえる。」と、独りごとをしました。そして、また、仕事をしていたのであります。  このとき、なにか、窓の障子にきて突きあたったものがあります。雪のかかる音にしては、あまり大きかったので、おじいさんは、なんだろうと思いました。  しかし、こうした大雪のときは、よく小鳥が迷って、あかりを見てやってくることがあるものだと、おじいさんは知っていました。これはきっとすずめか、やまがらが、迷って飛んできたのだろう。こう思って、おじいさんは、障子を開けてみますと、暗い外からはたして、一羽の小鳥がへやのうちに飛び込んできました。  小鳥は、ランプのまわりをまわって、おじいさんが仕事をしていたわらの上に降りて、すくんでしまいました。 「まあ、かわいそうに、この寒さでは、いくら鳥でも困るだろう。」と、おじいさんは小鳥に近づいて、よくその鳥を見ますと、それは美しい、このあたりではめったに見られないこまどりでありました。 「おお、これはいいこまどりだ。おまえは、どこから逃げてきたのだ。」と、おじいさんは、いいました。  こまどりは、野にいるよりは、たいてい人家に飼われているように思われたからです。おじいさんは、ちょうどかごの空いているのがありましたので、それを出してきて、口を開いて、小鳥のそばにやると、かごになれているとみえてこまどりは、すぐにかごの中へはいりました。  おじいさんは、小鳥が好きで、

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底本:「定本小川未明童話全集 4」講談社
出典:青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)